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東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)129号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1(一) 成立に争いのない甲第三号証(本件意匠の意匠公報)及び甲第四号証(本件意匠の意匠登録出願の願書及び図面並びに図面代用写真)によれば、本件意匠は、意匠に係る物品を「包装用容器」とし、意匠に係る形態を別紙第一に示すとおりにしたものであり、その基本的構成態様は、容体を直径対高さの比を略一対二とした円筒状に形成し、上面に、中央にリング状の引抜環を設けた落とし蓋を嵌入したものとし、左右両側面には、容体の高さ一杯に、二本の等幅でやや幅太な逆S字状の曲線がほぼ中央附近で最も接近し、上下端に向かつてやや離れる態様の模様を表し、また、左右両側面下端寄りの右側の曲線側近に星形模様を各一個を表したものであり、その具体的構成態様は、円筒体側面の地色を赤色、曲線模様を白色、上面落とし蓋を乳白色とし、星形模様は白色とし、その内部に両眼及び口様のものを赤色で、外側に放射状の細い直線四本を白色で表したものであることが認められる。

(二) 一方、引用意匠が、意匠に係る物品を「包装用容器」とし、意匠に係る形態を別紙第二に示すとおりとしたものであり、その構成態様が次のとおりであることは当事者間に争いがない。

引用意匠の基本的構成態様は、容体を直径対高さの比率を略一対二・七とした円筒状に形成し、上面を馬蹄形状の引抜環を設けた蓋で密閉したものとし、左右両側面に同じ模様、すなわち、上寄り三分の一附近で最も細く、上下端に向かつて幅が漸増する緩やかなS字状の曲線模様各一本を容体の高さ一杯に、また、左側面の曲線の上方寄り右側近に周縁を鋸歯状にした小円模様一個をそれぞれ表したものであり、具体的構成態様は、容体の地色を赤褐色、曲線模様、小円模様を白色、蓋を銀色にそれぞれ表したものである。

(三) 以上の事実によれば、本件意匠及び引用意匠は共に、意匠に係る物品を包装用容器とし、その容体を細長い円筒状に形成したものであるところ、このような容器自体の形状はごく普通にみられるものであるから、看者が強く注意を惹かれる意匠の要部は、その側面に表された模様の態様、すなわち、本件意匠にあつては「二本の逆S字状の曲線模様、星形模様」にあり、引用意匠においてもその側面に表された「一本のS字状模様と小円模様」にあると認められる。

2 原告は、本件意匠の基本的構成態様として、赤色のリボン状の模様が存在すると主張する。

しかしながら、前記1(一)で認定したとおり、本件意匠の容体側面部の地色は赤色であり、これに対し二本の等幅の逆S字状の曲線模様の色彩は白色で、しかも右二本の曲線はやや幅太に表されているのであるから、看者が本件意匠から看取する模様は、ほぼ中央附近で最も接近し、上下端に向かつてやや離れる、等幅で逆S字状の曲線模様であると認められ、右曲線に挟まれた地色と同色の赤色部分がリボン状の模様として看取されるとは認めることができない。してみると、本件意匠には赤色のリボン状の模様が存在し、この点を看過したまま引用意匠との類似性を否定した審決は誤りであるとする原告の主張は理由がない。

また、原告は、本件意匠の星形模様は意匠の要部ではなく、その態様及び配置個所が引用意匠の小円模様と同様であることからすると、右星形模様は、むしろ、本件意匠と引用意匠を類似のものとする要素であると主張する。

しかしながら、前記1(一)で認定したとおり、本件意匠の星形模様は、その内部に両眼及び口様のものを赤色で、外側に放射状の細線四本を白色で表したものであつて、単純な星形模様とは異なる特異なものであり、しかも本件意匠の側面に表された模様は右星形模様と前記逆S字状の曲線模様しかないことからすると、右星形模様は意匠を構成する模様としての比重の高い、看者にとつて注意を喚起される創作性のある図形であると認められるから、右星形模様は意匠の要部というべきである。そして、その模様は、前記1(二)で認定したとおりの周縁を鋸歯状にした小円型の引用意匠の模様とは明らかに異なるものであると認められるから、これが本件意匠と引用意匠を類似するものとする要素であるとは到底いい得ない。

したがつて、本件意匠の星形模様に意匠の要部が存するとして、引用意匠の小円模様との間に顕著な差異があるとした審決の認定、判断に誤りは認められない。

3 創作の容易性について

前記認定のとおり、本件意匠の要部たる模様の態様は、容体左右両側面に二本の等幅でやや幅太な逆S字状の曲線でほぼ中央附近で最も接近し、上下端に向かつてやや離れる態様の模様を表し、また、左右両側面下端寄りの右側の曲線側近に、内部に両眼及び口様のものを、外部に放射状の四本の細い直線を配した星形模様各一個を表しているものだけであり、原告の主張するリボン状の模様なるものは存在しない。そして、右「二本の逆S字状曲線模様」は前記1(二)で認定した引用意匠のS字状の曲線模様が、一本の曲線で、上寄り三分の一が最も細く、上下端へ向かつて幅が漸増する緩やかなS字状であることからすれば、その形状を全く異にする模様であると認められる。

また、本件意匠の星形模様についても、引用意匠の周縁を鋸歯状にした小円模様から星を連想することが容易であるとは認められない上、前記2で認定したとおり、本件意匠の星形模様は単純な星形模様とは異なる態様を示していることからすれば、本件意匠における「二本の逆S字状の曲線模様」や「星形模様」は、引用意匠に基づいて、当業者が容易に創作することができたものとは認められないものである。

したがつて、本件意匠にはリボン状の模様が存在することを前提として、本件意匠は創作容易であつたとする原告の主張は採用できず、この点に関する審決の認定、判断に誤りはない。

4 以上のとおり、本件意匠と引用意匠との類否判断及び創作の容易性についての審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告主張の違法はない。

三 よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編注〕本件における別紙は左のとおりである。

別紙一 本件意匠

<省略>

別紙二 引用意匠

<省略>

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